台中 彩虹眷村

ある日、元国民党軍の外省人、黄永阜爺さんが暇つぶしに自宅に絵を描き始めた。

描き進むに連れて、自らの絵筆より生み出される極彩色に、黄爺さんは夢中になっていった。 描けば描くほど筆が進み、幼少の頃より黄爺さんの頭に巣食っていた幾つもの奇妙奇天烈な生き物たちや景色が際限なく描かれていった。

もはや自分の家や壁などのキャンバスでは足りなくなっていった。腕は唸りを上げて更に描くことを欲していた。
腕が意思を持ったかのように、描きまくった。無限に湧き上がる創作意欲のままに。

そんな最中、爺さんは聴いた。この彩虹村はかなりの年月が経ち、どの家々も老朽化している。そのため再開発予定地となったということを。
爺さんの創作意欲に油が注がれ大炎上。どうせ壊されるのならば、最後にこの村を、わし色に染めてやろう。 彼は近所の壁、公園、電柱をキャンバスとして、自由自在に絵筆を振るった。
遠慮を知らぬ腕のなすがまま絵筆を振るって振るった。
かくして非現実の王国が出来上がった。

同じアウトサイダー、ダーガーと違うのは、奇天烈な色彩感覚に興味を抱いた人々が集まり、取り壊し反対運動が起こり、ネットで話題になり、遠い異国の人間も引き寄せ、たくさんのグッズ展開が行われ、黄爺さんも商魂たくましく進んで啖呵売をして、人々に囲まれ楽しく生きているところだ。

彩虹眷村

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