ショービジネスの世界は厳しい。ヤクザな世界。
研修期間を設けられた俺ら3人。俺らといっても他二人は、まだ二十歳を過ぎた新卒の女の子。その研修期間三ヶ月を待たずに、自分以外全員やめていった。
彼女たちは、社長に死ね、詐欺師と罵られ、もう夜が明けるだろうと思われる時間まで飲みに付き添わされ、カプセルホテルに泊り、睡眠時間2〜3時間で、青白い顔色で「殺されるわけじゃない!」と自分に言い聞かせ、決死の覚悟で出社していた。「社会の荒波にもまれる」というレベルではなく、悲痛な姿だった。彼女たちは残念ながら連絡なしに逃亡するような無責任さを持ち合わせていなかった。そうして何度か引きとめられた末に、辞めていった。
自分は阿呆なので、研修期間を終え、正社員として働き続けることを選んだ。
俺みたいな最底辺の糞虫が、このご時世、正社員様という特権階級として働ける、めったに無い機会だ、ありがてぇありがてぇ、振り返れば俺の人生、生ぬるく黒い泥の中を、面前に人参ぶら下げられてもがく駄馬のようなもんだったよ、ついに俺の人生にも、ぽんとご来光様がのぼり上げ潮調子になっていくんじゃねーの。否それは黒い太陽。
ブラック社員さん。