ほんまにオレはアホやろか

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十年くらいの間、ニュースで名前を見る度ヒヤヒヤしていたけれど、ついに水木しげる大先生が鬼籍に入られた。

自分が初めて送ったファンレターらしきものは、コミックボンボン宛の水木しげる大先生に書いた「水木先生、またボンボンでマンガを書いてください」というものだった。物を知らない自分は、水木大先生が仕事をなくして貧乏していたら可哀想だと思って出したのであった。

水木しげる大先生のファンになったきっかけは、アニメでもマンガでもなく自伝だった。

この水木先生、ベビィの頃より人と異なる時間や常識の中で生きていた。
毎日寝坊をして、ゆっくりと朝ごはんを食べ、勉強はやらずに、のんのんばあにより伝承や妖怪の英才教育を受け、大自然の中でスケッチや昆虫採集、隣町との戦争ごっこに明け暮れていた。
社会に出ても自分の欲求、睡眠や食事を優先する生き様を貫くために、それはそれは360度全てにおいてうまくいかない。仕事もクビになるし、学校もただ一人の不合格者になる。
戦争が始まりそこでも人並みのことができずに南方のラバウル激戦地にいくが、仕事ができずに毎日上官からビンタを受ける。
歩哨中鳥を眺めることに夢中になり、敵の奇襲に気が付かず、部隊は壊滅、死にものぐるいで別隊と合流したが、負傷により腕を切ることとなり、マラリアにかかり頭髪は抜け皮膚病にかかり、切り落とした腕からウジが湧いて出てくる。
軍規違反と知りながら食べ物を得るために訪れた土人村で、水木先生は初めて同じ魂のステージにある人間と出会う。
重罪だと知りながら、穴に隔離されるかもしれないというのに、通い詰める大先生。

われわれとは人生観が違うせいだろうか、なんともゆったりしていていいのだ。本当の人間に初めてあったような気がした。
(中略)
とにかく、彼らの生活は精神的に豊かで充実しているのだ。われわれのせかせかした生活がばかばかしくなってくる。
彼らは午前中三時間ばかり畑仕事をするだけだ。それだけで、自然の神々は彼らの腹を満たしてくれる。人一倍つくって、冷蔵庫なんぞに蓄えておく必要はない。いるだけつくって、いるだけ食えばいいのだ。自然の神は、彼らの心まで豊かにする。

幼い自分はこれを読んで、人生を怠けることに決めた。

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お別れ会には妖怪ポストがあって、水木大先生へのメッセージを投函出来るようになっていて、自分は出来る限り怠けていきたい、と書いてだした。

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しかし、怠けるぞ!と宣言している時点で本当の怠けはできないのだろうな。

ほんまにオレはアホやろか

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