今日は本田さんに8年ぶりに会いに行く。
書割のような青空を眺めながら、バイキングをモリモリ食べた後、宿から出る駅までの送迎バスに乗り込む。
宿泊客は自分以外、みんなおばあちゃんおじいちゃん。
バスが道後温泉駅に着いたけれど、松島発の特急が迫っている。
道後温泉駅発のチンチン電車では間に合わないので、三十超えて初めて一人で日本のタクシーを利用し、wifiの心細い電波に乗せて、050Plusで「電車逃して行けないかも〜」と本田さんに電話。「料理作って待っているんだから、間に合うように来なさい」って言われる。
次のがしたら二時間後なんだぜ!
なんとか特急しおかぜに滑り込みは成功。さっきの電話で話したところによると、おじいさんが乗り換えの駅で見送りに来てくれているそうだ。
到着後、電話をしようとしたのだけれど3G回線が掴めない!
繋がらない。。失礼な話、顔も忘れてしまって、一旦駅からでて、公衆電話から出て自分の格好を教えて、ようやく再会できた。
思えば一晩しかあってなくて、それ以来電話と手紙だけだ。
カタコト、カタコトと小気味良いビートを刻む、絵本の様な電車で、ゆるゆると山を越えて行く。
日差しが優しく、空は蒼く、緑は映える。
本田さんの家に着く。途中から息子さん夫婦も加わり、久しぶりに家族の中にいてホッとする。
たくさんのごちそうでおもてなし。
本当、ご飯が美味しい。美味しいんだけど朝のバイキング食べ過ぎてしまったせいで、そんなに入らないのが残念であった。
自分が小食なのを見て、遠慮しているのかと思ったのか「ほら、もっと食べ、もっと食べ」と何度も行ってくれて、「いやもう食べられねぇっす、お腹いっぱいっす、でも美味しいから限界まで食べるっす!」状態。
ご飯が終わると、みんな寝だす。
「ほらakifuくんも寝ぇや」って言われたけど、緑があふれるお外の景色をもっと見たいので、その辺を散歩することにする。
こんな看板を見つけた。面白そうだったので、2kmか、軽い運動にいいなと、ぐんぐん登っていく。しかし山の2kmってどれくらいかかるのかわからなくて不安になってくる。
そしたら、素晴らしい景色が面前に現れるではありませんか!
上海で騒音とPM2.5にまみれた自分は、成田空港に帰ると、「なんて綺麗な青空なんだ!」って驚くわけなんだけれど、四国の景色は本当に美しい。この景色を一望出来たことがすごく幸せだった。
どれくらい幸せかというと、一人空を見上げ、
「おいどんは〜、幸せだなぁ…」と独り言ちするほどさ。
二時間近くウロウロしていたのだけれど、本田さん宅では「akifuくんが迷子になった!」とのことで、自転車と自動車による捜索がなされていたのであった。
おばさん 「自転車で探していたんだけれど、全然見つからず、ひとまず家に帰ろうとしたら、なんだかやたらのんびりニコニコした顔とすれ違って、よくよく見るとakifuくんだったのよ!」
おばあさん 「後30分経っても見つからなかったら警察に連絡しようとしていたところだったよ。本当に警察に行こうとしたんだから。でも着ている服とか覚えてなかったから、一度相談してから連絡しようとしてね。それで家族みんな覚えてなかったら、知ってる情報で『32歳の千葉から来たakifu君が迷子になりました。背が高くて千葉から来た人です』って放送が街中に流れることになったかもしれなかったね」
と、のこと。連絡何度か入れようと思ったんだけど、やっぱり電波が届かなかったのだ。
連絡されなくてよかった。
別れ際、おばあさんはお金を僕に握らせた。
「いや、僕もう働いているので、お小遣いとかは……」
って断ったんだけど、おばさんも
「いいから、いいからもらってあげて」って言ってくれて、う~ん、32歳だけどもらっていいものかと少し考えた後、お接待として頂いておこうと思った。
「おばあちゃん、足が悪いから家の入り口までしかいけんけどな、見えなくなるまで手を振って見送るからな」
「うん、ありがとう。またいつ来れるかわからないけど、遍路また始めたいし、ここの景色も大好きだし、きっと来るよ」
しばらく歩いて振り返ると、行ったとおり、おばあさんは手を振って見送ってくれた。
「いい子になるんだよ〜!」
32歳だけど、いい子になろうと思った。
8年前から止まったまんまの遍路道。きっとまた巡る。